EVが一気に加速できる主因

EVが一気に加速できる主因は、電動機が回転数ゼロ(停車状態)から最大トルクを出せることです。エンジンのように回転を上げてから力が出る過程がなく、アクセルを踏んだ瞬間に駆動力がタイヤへ届きます。これは二次解説ではなく、電磁気の原理とメーカー・大学の一次情報で確認できます。

ICE vs. Electric Power and Torque Comparison
Being a visual learner/geek, I like to make plots. I was curious how the motor in my e40 compared to it's cousin, the 44...

上記ページのグラフが典型です。ガソリンエンジン(ICE)のトルクは低回転で小さく、ピークまで上がってから落ちます。電動機は低回転側がほぼフラットで、0 rpm付近から高いトルクが出ます。

1. 物理の理由:電流=トルク、停車時は逆起電力がない

電動機のトルクは、コイルに流す電流と磁場の相互作用(ローレンツ力)で生まれます。直流機では近似的に

です。交流同期機(EVで主流のIPMSMなど)も、インバータで電流を制御すれば同じです。

停車時(回転数0)では、回転によって発生する逆起電力(back-EMF)がゼロです。印加電圧のほぼ全部が電流に使えるため、理論上いちばん大きなトルクが出ます。回転が上がると逆起電力が増え、同じ電圧では電流が減り、トルクは落ちていきます。これが「低速で強く、高速で弱まる」特性の正体です。

鉄道用電動機の制御でも同じ考えが使われています。起動〜低速は定トルク、その後は電圧上限に達すると定出力(トルクは速度に反比例)です。自動車用EVも基本は同じです。

日産の公式説明もこの点をはっきり書いています。

エンジンは回転数が低いとトルクが上がらないため、走行条件に応じた複数のギヤが必要になります。一方、モーターは回転数がゼロから高トルクが得られ、ギヤによる変速の必要がありません。

レスポンス性の高い新設計モーターが、発進時から一気に最大トルクを発生。

日産:リーフ [ LEAF ] | 走行・安全 | 走行性能
日産リーフ(LEAF)の公式サイト。新開発の3-in-1 電動パワートレイン、磨き上げられた上質な静粛性、自分らしく走りを楽しむためのテクノロジーについてご覧いただけます。

マツダも公式に「磁場で動くため、ピークトルク到達のために回転を上げる必要がない。0 rpmから最大トルク」と説明しています。

ボルボも「エンジンは最大トルクに1,500〜4,500 rpmが必要。EVはバッテリーからモーターへ直接電力が行き、最大トルクが即座に出る」としています。

2. 応答時間が桁違いに速い

「トルクの大きさ」だけでなく、「立ち上がりの速さ」も決定的です。

東京大学の教授は長年、EV制御の一次研究をしています。繰り返し述べているのは次です。

  • エンジンのトルク応答はおおよそ 数百ミリ秒(例:500 ms)
  • 電動機は 数ミリ秒(例:5 ms)
  • 差は 約2桁

「エンジンが500 msならモータは5 ms」「エンジンが100 msならモータは1 ms」といった表現が論文・技報にあります。

日産リーフ開発でも、トルク指令から実トルクまでの応答を約 2 ms と報告されています。エンジンでは数百 ms 以下にはできません。駆動系のねじれ共振(約8〜10 Hz)より十分速いので、トルクを「狙った通り」に出せます。

テスラも公式に「停車状態からピークトルクの100%を出せる」と Dual Motor Model S 発表時に書いています。前後モーターを独立にデジタル制御し、トラクションに合わせてトルクを振り分ける、とも明記しています。

3. 変速の切れ目がない

エンジンは使える回転域が狭いため、多段変速機で回転数を合わせます。シフトのたびに駆動力が一瞬途切れます。

EVはトルク帯が広いため、多くが単速の減速機です。クラッチ切れや変速ショックがなく、0から高速までトルクが連続します。Car and Driver も「最大トルクを停車からすぐ出せることに加え、変速機で最適回転に合わせる必要がない」ことが速さの主因だと書いています。

4. 補助要因:多モーター、AWD、低重心

瞬時トルクだけではタイヤが空転します。実際の市販高性能EVが速いのは、次も効いています。

  • 前後(または四輪)独立モーター:各輪にトルクをミリ秒単位で配分できる。テスラ、日産 e-4ORCE、リマック等。
  • 床下バッテリーによる低重心:荷重移動と接地が安定し、大トルクを路面に伝えやすい。
  • トラクション制御の速さ:モーター応答が速いので、滑り始めを検知して即座にトルクを落とせる(堀研の粘着制御研究の主題でもある)。

日産技術者は「ガソリン車に比べ、力が立ち上がる時間がひと桁早い」とも述べています。

まとめ

「一気に」感じるのは、最大トルクが大きいこと以上に、待ち時間(エンジンの吹き上がり・変速・ターボラグ)がないからです。同じピーク出力でも、最初の0.5〜1秒の加速度が全く違います。

ただし限界もあります。高速では逆起電力でトルクが落ちる、単速だと最高速側で不利になりやすい、大電流は発熱で制限される、最終的にはタイヤのグリップが上限です。日産も、トルクを一直線に出すとドライブシャフトがねじれて振動するため、意図的にトルクを変調している、と技術者が説明しています。つまり「出せる力」と「出してよい力」は別問題です。

要するに、EVの急加速は宣伝文句ではなく、停車時に最大電流=最大トルクが出せる電磁機の性質と、ミリ秒単位の電流制御の結果です。

その他
スポンサーリンク
シェアする
管理人をフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました